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日中セミナー「これからのビジネス連携」を開催
日中間のITビジネスはどうなるのか、日本のITビジネスはどうなるのか

(2014/11/21)

日中セミナー「これからのビジネス連携」を開催基調講演を行う中国対日情報サービス産業連盟(鐘明博理事長)

JISAグローバルビジネス部会では、中国情報技術サービスとアウトソーシング連盟(曲玲年理事長)、中国対日情報サービス産業連盟(鐘明博理事長)、アジアITビジネス研究会(藤原弘理事長)と協力して、日中間のこれからのビジネス連携を考えるためのセミナーを10月30日に開催しました。

今回参加された中国側企業や団体は、もともと日本からのオフショアアウトソーシングによって成長してきた中国の日系ソフト開発会社が主体ですが、現在は円安、人件費高、採用難という非常に厳しい事業環境の中にあります。そのような中で彼らは、将来のビジネス展開として、日本向けビジネスだけでなく中国ローカル市場向けビジネスも視野に入れています。
一方で、日本市場に対しては、特にプログラミング段階だけでない、上流工程からの一貫したビジネスの獲得を熱望しています。それによって苦境を脱したいという思いがあるようです。

さて、セミナーでは、まず、大須賀JISAグローバルビジネス部会長、そして曲理事長の開会挨拶が行われた後、藤原理事長による基調講演が行われました。

藤原理事長のお話は、製造業の世界でよく見られるように、中国で育った優秀な人材を東南アジアなどの成長過程にある現場に送り込み、指導に当たらせてはどうか、というものでした。中国支援によるカンボジアの大規模工業団地開発などが行われており、そこで中国人技術者の活躍の場を広げている日系企業の例などをあげ、新たな連携の方向性を提示頂きました。

続いて、鐘明博理事長の基調講演がありました。
「日本のIT企業の研修生となることからはじまり、日本とは20年間の付き合いがある。かつては優秀な人材が集まってきていた。しかし、日本企業からの受託開発は、プログラミング等の下流工程がほとんどで、今では若いエンジニアにとって全く魅力のないものとなっている。優秀な人材の多くはネット企業へ移ってしまっている。このままでは日本向けソフトウェア開発のビジネス自体が成り立たない。上流工程から参画するビジネス機会が多くなれば、経験も積めるし、エンジニアにとってより魅力ある仕事にもなる」といった趣旨の講演でした。

お二方の基調講演に続き、今泉勝夫氏(EnMan代表取締役・アジアITビジネス研究会理事)がモデレータとなり、「これからのビジネス連携」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。
中国の経済成長に基づく開発人件費高騰、円安などの要因が重なり、コスト抑制を目的とした中国へのITオフショアアウトソーシングは、皆さんご承知の通り基本的に成り立たなくなって久しいです。しかし、経済環境や政治環境についてはどうにもなりません。ここで中国側のパネリストからは次のような、ある意味、日本企業にとっては耳の痛いご指摘が相次ぎました。

-日本のビジネスの仕方が20年間ほとんど変わっていない。
-日本のスクラッチSIなどは海外では通じない
-単金×工数方式は諸悪の根源、システムの価値に重点を置け
-クラウドとモバイルは今やどこでも必須
-今の時代、サービスインまでをいかに短くするかにグローバル顧客は重点をおいている。欧米相手のビジネスでは2年かかるところを1年で仕上げれば、1.5倍の対価をもらえる。
-ところが、日本の場合、ゆっくり長くかけたほうが対価が多くなる(薄利安定だが)
-これでは世界のビジネススピードとあわない
-優秀な技術者も来なくなる
-技術者も、失敗したところで首になるわけでもなく、ペナルティがあるわけでもない。安定はいいが、モチベーションを高く持つのは困難

おっしゃる通りですが、どうすれば変わっていくのでしょうか?
変わらなければいけない理由はあるのでしょうか?
変わらないまま、いつまでこの状態のビジネスが続けられるのでしょうか?

中国からの指摘は、日本企業の多く方にとっては既に暗黙裏に承知していることばかりのはずですが、「このままでいいんだ」という人たちの方が今の日本、今の業界の多数派だというのが現実の姿なのでしょうか。

セミナー修了後、自問自答してしまいました。