特集 -Special-

グローバルITにおけるベンダー、ユーザーの需給ギャップ その1
グローバルビジネス部会勉強会報告
(重点アジアグループ主催)

(2015/02/16)

グローバルITにおけるベンダー、ユーザーの需給ギャップ その1勉強家でのパネルディスカッション風景
○JoC 向けITビジネスは成り立つのか?

 1月20日、グローバルビジネス部会の勉強会が開催されました。
 今回の勉強会のメインテーマは「グローバルITにおけるベンダー、ユーザーの需給ギャップ」で、キーノートとパネルディスカッションを行いました。一橋大学商学研究科・神岡太郎教授、新日本有限監査法人・日向野奈津子さんのご協力を頂きました。
 グローバルビジネス部会では、重点アジアグループを設置して、日系グローバル企業の海外進出に伴う情報システムの海外展開サポートビジネスについて検討を進めてきました。 多くのITベンダーが、日系現地法人(JoC)の進出が多いタイ、ベトナム、インドネシアなどの国に注目し、ローカル拠点を設置してJoC向けのビジネスを展開しようとしています。
 ところが、JoCが使えるIT予算は一般に非常に限定的で、拠点も世界の複数の地域に分散するため、JoC向けのビジネスが成立しにくいなどの声があがっています。それでも場合によっては、日本の本社(重要顧客)との関係上JoCには大赤字覚悟でシステムサポートをしなければならない、などの声も出ていました。 かといってJoCがあれば、赤字でもビジネス自体はあります。当初赤字でもJOCで実績をつくり、その後でローカル顧客をつかむ、こういう戦略はありえるのでしょうか。

○日本企業の国際展開と現地業務の実際はどのようなものか?

  日向野さんによるキーノートでは、次のようなポイントが示されました。

・ 2013年度は日本企業の直接投資は約18兆円。輸出より現地法人設立という流れが定着。
・ 日本企業が現地法人に期待していることは「販売力強化」、機能は「営業機能」が第1位。
・ 海外子会社の最適化には次の流れがある。(1)拠点設立、(2)事業開始、(3)売上拡大、(4)利益追求、(5)グループ内調整、(6)全社最適化
・ 現地で一揃いのITが必要なのは(3)と(4)の段階のみ。(1)と(2)はエクセルや現地会計ソフト購入で間に合う。(5)(6)は全社レベルの連結、管理、システム統一が必要になる。
・ 現地の裁量を重視しすぎると、ITガバナンスの見地からも問題。
・ ITはできるだけ集約すべき
・ 単なる現場サポートでなくグローバルな経営管理を念頭にIT構築する
・ 現地にIT人材はいないことを前提とする

 なお、日本企業による海外M&Aのケースでは、ITデューディリジェンスを実施し、日本本社で標準化を行う、現地で本社標準の採用が難しい場合は、第2標準(第1標準とのインターフェイスは必要)を採用する等、現地の裁量は極力抑えていくことがITガバナンスの観点から重要と言えます。

 次に「グローバルITにおけるベンダー、ユーザーの需給ギャップ」をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。パネリストだけでなく、参加者の方も交えて熱心な意見交換が行われました。
 パネルディスカッションの様子は報告(その2)をご覧下さい。