特集 -Special-

APICTA特集(その2) -海外ソフトウェアコンテスト出展体験報告!! -
審査員対談編

(2017/03/13)

APICTA特集(その2) -海外ソフトウェアコンテスト出展体験報告!! -

APICTA審査員対談編

APICTA審査員として、会議室に5日間も缶詰になり、英語でのプレゼンを聞き、質疑と評価をして頂きました、株式会社シーエーシの大須賀正之さんと株式会社網屋の柴崎正道さんにお話しをうかがいました。

 

 

-APICTAのカテゴリー-

インタビュアー:

APICTA Awardにはカテゴリーが20くらいあるそうですが、それぞれどのカテゴリーの審査をしたのでしょうか?

柴崎:

私はアプリケーション&プラットフォームというカテゴリーでした。ここは広いカテゴリーで、何でも入ってしまうのではないかと思います。ヘルスケア系もあり、事務処理・ERP系もある。E-コマースサイト作成支援ソフト、WEB作成ツール、情報共有ツールなどもあり、どうやって比べたらいいのか難しい分野です。全部で19件のプログラムの審査をしました。

大須賀:

私は2つあって、1つはファイナンシャルインダストリ、金融向けのソリューションです。といっても日本のものとはだいぶイメージが異なるのですが
もう1つはインダストリー・プロダクトで、こちらもやはりいろんなソリューションが出てきました。例えば優勝したのは、畜産業向け製品で、牛とかの予防接種記録を管理するデータベース、ほかに3Dプリンター、照明を使った位置確認システム、家庭用(HEMS用)ネットワークシステムなどがありました。



-大変だった点-



インタビュアー:

ジャッジで苦労した点は?

大須賀:

吐きそうでした(笑)ずっと続くんですよ。審査が。

柴崎:

そうそう、ずっとアタックされてる、みたいな気分でした(笑)

インタビュアー:

30分単位のプレゼンが延々続くということですか?

大須賀:

もちろん英語のプレゼンを聞くのですが、その間、一生懸命何を質問しようか考えなければならない。質問して、採点して、1つ終わってほっとする間もなく次のプレゼンが始まり、それを繰り返していく。質問があるジャッジから手を挙げて、発表者がそれに答えていく。答えが長くて時間が足りず、聞きたいことを質問できないこともありました。

柴崎:

私の方は、チーフジャッジから、「質問あるか」と振られました。気の利いた質問をしなければならない、他の人が聞いていない質問を考えておかなければならない、というプレッシャー、緊張感とストレスがありましたね。

大須賀:

他のジャッジはほとんどが(ジャッジ)経験者で、ものすごく詳しい。
技術のことだけではなく、金融についても詳しい。つまり銀行業務だけでなく、証券や保険、送金や決済、クレジットカードなどについても詳しい。ジャッジとしての見識も問われている感じで、変な質問はできないというプレッシャーがありました。

柴崎:

私の所は、チーフジャッジが香港の大学の先生でオールマイティなスタンスをとり、バングラデシュのジャッジはマーケティング、台湾のジャッジITの技術面での質問など、質問分野が決まっている感じでした。
当初、私はセキュリティカテゴリーのジャッジだと言われていたのでその準備はしていたんですが、当日急な欠員が出て、予定していなかったアプリケーション&プラットフォームに変更になってしまいました。
事前のジャッジミーティングで「アクシデントはつきものだが、今回も
ジャッジの欠員がでた。いろんな人生送ってきて経験豊かなので(変更があっても対応が)できるよね」(笑)って言われて、断れなかった(笑)

大須賀:

ジャッジは、結局自分の専門や経験をもとに、目の前にあるものをどう判断するか、ということを求められているので、最後は個人がどうにか捌けという感じでした。

 -実際の審査方法-

インタビュアー   

審査はどういう方法ですか?

大須賀:

指示通り自分の

PCを持参して審査会

場のネネットワークにつなぐと、ジャッジ用のシステムにアクセスできる。そこで評価の点数を入れると、それがチーフジャッジのところでリアルタイム

に全部見えるような形になっていました。最高点と最低点を外して、残りの3人の平均で比較をするルールになっています。結局のところ、上位にくる製品は、どのジャッジにも共通していたのではないかと思います。ただ、1位なのか、2位、3位なのかが全員一致するのもあったし、そこはジャッジによって順位が違うものありました。最後にWinnerを誰にするかジャッジ同士で議論の時間が30分あるのですが、それを大幅に超え1時間議論したカテゴリーもありました。柴崎さんの方でも最後に調整しましたよね?

柴崎:                 
最後は非常に大きな調整が入りました。(笑) 
私のところは今回ジャッジが4人体制だったので、最高、最低を除外することなく、点数がダイレクトに反映する形になってしまいました。突拍子もない点をつけたらどうしよう、という危惧もあったんですが、他のジャッジの採点の偏差が見えるので抑止力が働く。最終的には、順位の違いはあってもみんな同じような基準で判断しているんだな、という結論になっていたと思います。

柴崎:            
その背景として、ジャッジがプレゼン内容の専門知識をよく理解し、そ
れに対し客観的な判断をしているかどうかよりも、プレゼンとプロダクトのインパクトをみな一様に同じように感じて、ユニークさや面白さ、社会貢献性を評価しているんだな、というのがわかりました。

大須賀:             
そうでしたね。質問項目や評価項目も専門的でなく、むしろ印象に近い
ようなものだったと思います。自分の評点はどうだったのか非常に気になってはいたのですが、チーフジャッジの発表を聞いて「あぁ大きな違いはないんだ」ということがわかりました。

-審査で重視されるポイント-

インタビュアー: 

プレゼンする側として参加された網屋さんチームの話の中では、ちょっと技術的なところに重きを置きすぎたという反省がありました。一方、審査員からはプレゼンのインパクトが大事だ、というお話しがありました。製品の性能や機能でなく「どれだけ印象深かったか」によって評価は変わるということでしょうか?

柴崎:

結局どのようなプレゼンをするのか、というのは非常に大事で、上位の賞をとったところはみんなプレゼンが上手だったというのが事実です。

大須賀:

さすがに、どうってことがないものでもプレゼンさえよければいいのか、というとそうではなく、同じようなレベルの中では、プレゼンの印象によって順位がかわるという意味合いです。プロダクトとしては上位のものにひけはとらなかったが、プレゼンの英語がへたで下位になったものもありました。

柴崎:

私のカテゴリーでは上位になったのは全て英語ネイティブか、準ネイティブの国でした。

大須賀:

ファイナンス・カテゴリーのWinnerはタイでしたが、英語は非常に上手でした。ちなみに製品はアジアではよくある分野のMPOS -モバイルPOS-のソリューションでした。MPOS分野は3つ出展があったのですが、これが一番サービスレベルが高く実用化している印象がありました。チーフジャッジがその場で個人のクレジットカードを差し出して、これで決済してみてくれ、というテストも行いました。Winnerの製品は全く問題なく処理されていました。

 

柴崎:

審査をリードし、影響力をもっているのは間違いなくチーフジャッジです。彼らはプレゼンの内容をものすごく懐疑的に見ています。言うだけ    なら何でも言えるよね、と考えており、実際に何件かはそういうプレゼンもあったのですが、ジャッジはネットで実利用状況を調べたりしました。

 

大須賀:

技術的に先進的というより、落ち着いた実績がある技術やスポンサーがついているものが多かったと思います。

柴崎:
そうですね。大口ユーザーとの契約も済んで、投資家の支援も確定している製品が多い印象があります。その開発責任者、CEOなどが出てくるので、プレゼンも慣れていて上手でした。

インタビュアー:

TEDのようなものとは違うのでしょうか?

柴崎:

違いますね。「真に迫るリアルなインパクト」が重視されています。

インタビュアー:

審査員としての資格や適正はどう考えますか?

大須賀:

自分のベースがある人であれば、それを軸にして何か言えるのではないでしょうか。

柴崎:

社会貢献性とか共益性とかを実生活に照らして判断できる目を持っていれば良いのではないでしょうか。

インタビュアー:

最後に1位のシステムを紹介して頂けますか?

柴崎:

アプリケーションで1位になったのは、e-コマースサイト上にアクセサリーや小物を3Dで再現してみせるためのシステムです。この会社は、システムそのものを持参して実演しました。スマホで(反射板で囲まれた)台に載せた小物の写真をとり、それをWEBのデザインツールとつなげてアップロードするという、見かけローテクのシステムでした。

インタビュアー:

そういうものは昔からありますよね?

柴崎:

そうなのですが、実演したときにインパクトがあり、面白かったです。私にとっては珍しくなく評価点は低かったのですが、他のジャッジはみんな高評価でした。最終審議の時になぜ評価が高いの?と確認したところ「目で見てわかる。これ以上分かりやすいものはない」という評価でした。

大須賀・柴崎:   

あとは操作が簡単、ド素人でも、スマホと撮影キットさえあれば簡単に作れるという特徴がありました。これだけで全体を判断するのはどうかと思いますが、ジャッジのエッセンス、基準が非常に凝縮されてあらわれたWinnerだったといえます。

 

 

インタビュアー:

皆さん、ありがとうございました。