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日韓ITセミナー 2013開催報告

(2013/08/01)

日韓ITセミナー 2013開催報告

続いて日韓セミナー2013では、五十嵐 隆国際委員長の挨拶に続いて、野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部長 桑津浩太郎氏、韓国情報社会振興院(NIA)Executive Director キム・ヒーコン氏、LG CNS シニアリーダー  ボニー・ペック氏、NTTドコモ戦略情報システム部長・白川喜久子氏、アンラボ副社長 チャン・デフン氏による講演が行われました。

桑津氏の基調講演では、「アジアは成長市場として存在感を高め、クラウドやネットワークを中心に発展するが、域内先進国が高齢化社会を迎えることによって、ITはより社会的な対応を迫られ、安心・安全・ヘルスケア等を実現する役割を負っていく。産業としてはICT側主導ではなく、既存産業が変革を迫られることによってスマート化が進むが、これは短中期的には既存産業の売上げ減少を伴うものであり、産業界側としてスマート化を進めたいというインセンティブに欠ける。社会のスマート化にはインセンティブが必要で、インフラ更新に伴うインセンティブのあり方や新しいビジネスモデルを構築するために、ICTは重要な役割を果たすことができる。政策的にも社会のスマート化を支援することが必要である」との報告が行われました。

続いてNIAキムヒーコン氏は「韓国は歴代大統領が主導してICT化を進めて来た。韓国の人口規模からいうと1,000万という数字が重要な意味をもち、これを超えると自立的に普及が進む。政府としてはこの1000万を意識してICT政策を進めてきた。今後、韓国は、E-ガバメント3.0という政策を進め、クリエイティブ・ガバメント、クリエイティブ・エコノミーを実現することによって、就職難を始めとした様々な社会的課題を、ICTを使って解決していきたい。これからはICTを使っていかに幸福になれるかという点で、大統領とICT政策を話し合っていくことになる」との講演が行われました。

日韓の産業界からの報告として、韓国LG CNS ボニー・ペック氏、日本側ではNTTドコモ白川氏による講演が行われました。

LG CNSペック氏は「テクノロジーが急速に進化し、現在のクラウド、ビッグデータ、モバイルを使うことによって、これまで実現するのに時間とコストがかかりすぎていたものが適正な値段と時間で解析できるようになり、消費者のニーズを満たすソリューションが開発できるようになってきている」と事例をあげて報告が行われました。

NTTドコモ白河氏からは、「ドコモの回線契約者だけでなく、全てのインターネットユーザーをターゲットにしてビジネスを展開していきたい。ビッグデータの利用については技術的観点からだけでなく、ユーザー企業内部の人間がデータの活用方法についてよく理解することが大事で、データをいかに利用してビジネスの発展につなげていくか、という点で、社内向けにデータ分析おたすけサイトを運営したり、データ分析事例発表会等、グループ各社や営業を巻き込んで継続的にセミナーや議論の場を設定したりすることにより、ビッグデータを利用する側の理解を深めようとしている」ことについて具体的な説明がありました。ビッグデータ、ビッグデータと騒がれてはいますが、どのようにビジネスに利用していったらいいかは、ユーザーとしてもチャレンジであり、試行錯誤を重ねていると思われます。ベンダーもエンド・ユーザーと一緒に勉強会を実施していくことによって、ビッグデータ関連のノウハウ集積ができるのではないかと思いました。

最後に、韓国の情報セキュリティ企業アンラボのチャン氏からは、サイバー脅威の動向と個人情報保護対策について講演が行われました。「次代の変遷によって,サイバー攻撃はより先鋭化し犯罪化している。個人情報データを入手し、転売すれば金になる。設計図を一から構築するより、盗用した方がコストは非常に安くすむ。米国の空母や戦闘機の設計図がクラッキングされ、その設計図に基づいた新しい空母や戦闘機などが製造されている。日本でも同様に政府機関や防衛産業などが対象とされている。これらについては、APT : Advanced Persistent Threatといわれる攻撃方法で、システムやビジネスのキーとなる特定の人物を対象に、成功するまで様々な手段やツールを使い何度でも継続的に攻撃する手法で、システムへの侵入を試みる。苦労して開発するより、あるものを盗むほうが効率的だという経済的犯罪とも言える。侵入された後で「情報が盗られたかどうか確認できない」とよく発表されるが、これはそう言う以外にないからであって、情報は必ず盗られているといえる。個人情報保護に関してはデータを最小限に収集し、業務が終わったら必ず削除する、クラッキングに対してはサーバーの管理、データのオーナーシップの明確化等の対策はあるが、結局は人の教育の問題である」と報告がありました。