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グローバル人材を探せ!
外資系企業の人材管理について、外資系ソフト会社でご活躍中のS営業本部長と意見交換をしました。

(2014/12/26)

グローバル人材を探せ!この写真は本記事の内容及び関係者とは関係がありません

こんな言葉をよく耳にします。―「グローバル人材が不足している。」「グローバル人材の育成が必要。」

 グローバル化が進まない理由の一つに人的要因を上げる企業は多く、人材育成はグローバル化における大きな課題となっています。自社のグローバルビジネスを牽引する「グローバル人材」を確保したい、社員を「グローバル人材」に育成したい、と考える企業は少なくありません。グローバル人材が不足しているというものの、日本国内でも外資系企業では多くの日本人がグローバルに活躍しています。では、彼らはどのようにして「グローバル人材」と呼ばれるに至ったのでしょうか?

モデルケースとして、外資系
IT企業で実際にグローバルに活躍されているSさんにお話を伺いました。
Sさんの勤めているソフト会社は、アメリカに本社を置く外資系ソフトウェア会社の日本法人です。
100を超える国々でビジネス展開を行い、世界で1,900 名以上の従業員が働いています。

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1.
       外資系企業は「働く環境」としてどんな違いがあるのでしょうか?

 ■           マネジメント、職務、処遇
トップダウンが基本です。個々の職務は
job description(職務記述書)により権限と責任を含めた担務が明確に定められています。担務以外のことはやりませんし、パフォーマンスによって評価されます。個人で仕事をしますが、当然多くの仕事はチーム組成が必要です。その際の人集めも個人で行わなければなりません。従ってネットワーク作りは重要なカギです。処遇は、仕事によって大きく異なります。例えば、フィールド業務かバックオフィス業務かによっても異なりますし、ジョブ・レベルによっても異なります。基本的には年俸制です。退職金は日本企業に比べ少ないです。

 ■           外資系企業のメリット
多くの人が思うイメージ通りだと思います。実力主義で、年功序列はなく、性別による制約もありません。比較的自由な雰囲気で、個性が尊重されます。日本企業に比べ、ドライなカルチャーだと思います。また、語学を活かしたグローバルな仕事をすることができます。全体としてハイリスク・ハイリターンな世界ですが、これをメリットと感じるかどうかは個人の感じ方にもよるかもしれませんね。

           外資系企業のデメリット
日本法人は支店に過ぎず、本社の影響を大きく受けます。トップ次第ですべてが変わります。リストラもあるし、社員の入れ替わりも激しいです。外国人にとって日本人は難解で、商習慣の違いなどはなかなか理解してもらえません。

           人材活用
必要な人材は、「即戦力」を中途採用などで確保します。従って教育はありませんが、成果を出すための支援は惜しまず提供されます。職制に応じたパフォーマンスを発揮し続けることが求められ、発揮できない場合は、後任に取って代わられます。評価は職種毎に
KPI(重要業績指標)が設定され、細かく数値化されています。各人の数値は、システム上ですぐ見ることができるようになっています(閲覧権限は設定されています)。一方、新卒はごくわずかです。育成するという概念はあまりありません。

2.グローバルな環境で成功するには何が必要なのでしょうか?
外資系企業は「プロ」を雇うという考え方なので、個人として何ができるかが重要です。皆、自分のスタイルや得意領域を明確に持ち、その得意領域で転職して、スキルアップしていきます。会社に対するロイヤリティはありません。日本は「就社」なのだと思いますが、外資は「就職」なのです。

 効率経営が外資の基本スタンスであり、世界共通が必須と考えられています。勿論、市場としての優位性、メリットがはっきりしていれば別ですが、今の日本は例外を認められる程プライオリティの高いマーケットではなく、アジアの中の1国に過ぎません。かつて日本はシンガポールよりも重要視されていましたが、今ではAPACHQはシンガポールに集中している状況です。

世界は急速に変わっています。本当にすごいスピードで変化しているので、過去の成功体験はまったく役に立ちません。成功体験は全部捨ててしまった方がいいと思います。必要なのは適応力、察知力だと思います。そして一緒に仕事をする仲間を作っておくことも大切です。個人で仕事をするといっても、協力してくれる仲間は必要です。例えば、うまく適応できずに「仕事ができない奴だ」という評判が立ってしまうと、皆そういう人とは一緒に仕事をしたがらなくなるので、うまく仕事を進められなくなってしまいます。だから、任せられたら何とか対処できるかどうかも大切なのです。

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Sさんの会社は開発・製作を海外中心で行っており、日本はセールス機能に特化しているそうなので、その点で日本の
SIerと単純比較は出来ません。でも、グローバルに働くことも意外に泥臭いと思いませんか?

個人が自らスキルアップを図り、汗水垂らして実績を積み重ねていく。やるべきことはシンプルですが、パフォーマンスを発揮し続けるのは容易ではありません。だから、疲れて辞めていく人がいるというのにもうなずけます。でも、その困難に立ち向かい、実績を積み重ねていくことができる人こそが、「グローバル人材」と呼ぶに足る人材なのだとすれば、そこには本人の強い意志が不可欠であり、トレーニングや研修と言った手段で、容易に育成できるものではないことが明らかです。

「個人」を平均化し団体としての結束力を強め、「企業」という単位のチーム戦で戦ってきた日本人にとって、グローバルという名の個人戦は不得手な領域と言えるでしょう。

消費税増税やマイナンバー施行、
2020年の東京オリンピック開催と、日本のIT業界に追い風が吹いている今、国内市場に注力する企業が多いと聞きます。日本のITビジネスの半分は公共と金融で、そのどちらの分野も日本特有の仕組みで運営されているため、他者の参入が難しく、変わること自体が難しいという見方もあるようです。

でも、世界は劇的なスピードで変わっているという現実に向き合わず、今までと同じ戦い方を続けていて、日本の
IT産業は世界で弱まりつつあるプレゼンスを再び高めることができるのでしょうか?

まずは、自問してみませんか? 「個人として何ができますか?」「そのためにあなたは何をしていますか?」