特集 -Special-

電子政府 エストニア・フィンランド 北欧視察に行きました!
2019年3月、海外視察(エストニアとフィンランド)に行きました。

(2019/03/22)

電子政府 エストニア・フィンランド 北欧視察に行きました!
平成31年3月3日(日)~9日(土)、JISAグローバルビジネス拡大委員会による「エストニア・フィンランドICT視察ミッション」として希望者17名が、エストニアの首都タリン、フィンランドの首都ヘルシンキにおいて計9つの機関を訪問しました。
 
エストニアは人口密度の低さから物理的な行政サービスオフィスを各地に設置することが現実的ではありませんでした。そこで全国民に行政サービスが確実に行き渡るよう99%の行政サービスをオンライン化させた電子政府国家です。
またその電子政府を支えているのが情報交換基盤「X-Road」と、国民に普及している「国民IDカード」の存在です。

またフィンランドも同じくX-Roadを共同開発し、福祉立国としてだけでなく電子政府国家としての存在感をより強めており、今回の視察の訪問先としました。
訪問先は9機関。
【訪問日程】 
日程 訪問先
エストニア
(タリン)
3/4(月) e-Estonia Showroom
経済通信省
Startup Estonia
3/5(火) Eesti 2.0(タリン第21学校)
タリン工科大学メクトリー
フィンランド
(ヘルシンキ)
3/7(木) Population Register Centre
Kela
3/8(金) Technology Industries Finland
MaaS Global
 
そもそもエストニアとはバルト三国の1つで、長くソビエト連邦の支配下にありました。1991年に独立して以来、現在の電子政府を目指した政策・法律を次々と打ち出し、現在のように行政サービス99%オンライン化という結果に至ったとのこと。
フィンランドは北欧に位置する国で、エストニアとは非常に近くフェリーで2時間程度で渡航することができます。
フィンランドはエストニアより先に国民IDカードを導入した国で、エストニアとはX-Roadの共同開発もしています。

【今回の視察先マップ】 

以下本視察概要となります。


3月4日(エストニア・タリン)
●e-Estonia Showroom
エストニアの電子政府についてのプレゼンテーション、サービスデモ、企業の製品展示などを行う政府機関。電子政府による行政サービスとその理念(「Once-Only(一度国民から申請を受けた情報は政府機関は二度と聞かないという考え方)」)やIDカードを使った国民ポータルサイトへのアクセス、国民としての利用デモンストレーション、X-Roadの概要、電子投票についてを見学した。

 
●エストニア経済通信省
日本の経済産業省と総務省が合わさったような機関であり、今回は電子政府、IT及び通信を管轄するCIオフィス長から今後のエストニアの電子サービスについて話を伺った。具体的には、現在申請ベースであるサービスを、ライフステージや会計年度に合わせ自動的に給付金を支払うサービス等を構想中であると紹介いただいた。
 

●スタートアップエストニア
政府系金融機関の1部門であり、国内のスタートアップエコシステムを創出することが同機関の目的である。具体的にはコワーキングスペースの提供や、投資の誘致、海外のスタートアップ誘致のためのStartup VISAの発行等を行っている。同機関ではプレゼンテーションのあと、コワーキングスペースの見学もさせていただいた。


3月5日(エストニア・タリン)
●Eesti2.0 (タリン第21学校にて説明会) 
Eesti2.0は最新テクノロジーを教育現場に持ち込むことを目的とした非営利団体であり、本視察ではタリン第21学校にて同団体が開催するサマースクールの概要説明、及び参加した学生のサマースクールの成果発表や感想を聞くことができた。また、会場であったタリン第21学校の生徒による学校案内や、タリン第21学校で必須になっているロボティクスの授業を見学させていただいた。


 
●タリン工科大学 メクトリービジネスイノベーションセンター
タリン市内にある主要国立大学の一つであり、学生・企業・研究者をつなげるインキュベーションセンターとしての役割を持つ。今回は校内見学のほか、サイバーディフェンスセンターとの協業、校内で現在行われている歩行者への注意喚起機能があるe-pavementや海洋データを集められるsmart fabricといった実証実験について紹介いただいた。


 
3月7日(フィンランド・ヘルシンキ)
●Population registry centure(住民登録センター)
行政サービスポータルサイト「Suomi.fi」の運営や、住民・企業・行政機関の基礎データや選挙データの収集を行うフィンランド財務省傘下機関。今回は個人情報がデータ連携される際セキュアであることを担保するための認証局、タイムスタンプ等の説明や、X-Roadがより多くのサービスにつながるための開発環境・テスト環境があることなども説明され、理念だけではなくより実際の運用について見聞を深めることができた。


 
●Kela(社会保険庁)
ケラは福祉立国であるフィンランドの福祉サービスを一手に引き受ける行政サービス機関であり、年金、失業保険、医療保険などを算出しサービス展開している。そのため国民はe-IDが必要であり、フィンランドでは銀行のカードと一体となったBank IDカードとして普及しているとのこと。また、エストニアと同じくライフステージ等に合わせて自動的に年金や児童手当給付の手続きができるように現在構想中であると紹介いただいた。


3月8日(フィンランド・ヘルシンキ)
●Technology Industries of Finland
フィンランドの業界団体であるTechnology Industries of FinlandやAalto大学では「My Data」という考え方を推進している。My Dataとは、自分の情報は個人によってコントロールされるべきものであるという個人中心のデータ運用の考え方であり、大企業だけではなく、個人が認可した先にデータを共有することができるというオープンエコシステムの創出につながるということを紹介いただいた。
MyDataは日本でも推進組織があり、活動しているとのこと。https://mydatajapan.org/ 


●MaaS Global
WhimというアプリケーションでMaaS(Mobility as a Service)を実現しているフィンランド発のスタートアップ企業。目的地を入力すると最適な経路を表示し、アプリ上で一括決済できる。Whimでは個人が車を持つ状況よりも、公共の自転車・バス・電車等に乗り環境的な持続可能性や個人の支出の無駄をなくすことを大切にしているとのこと。日本にも限定的な地域ではあるが2019年進出予定であると報道されている。



なお、今回の詳細な報告は2019年4月発行のJISA会報にて掲載予定です。
 
タリン、ヘルシンキは3月でも非常に寒く、体調管理や服装管理で大変な旅程でした。しかし天候に恵まれ、飛行機や船に遅れがなく本当によかったです。また、エストニアでは日本からのデリゲーションはかなり数が多いと聞きましたが、各訪問期間のご担当者さまも快く受け入れしてくださり、本当に感謝してもしきれないです。

以上。