特集 -Special-

グローバルITにおけるベンダー、ユーザーの需給ギャップ その2
グローバルビジネス部会勉強会報告
(重点アジアグループ主催)

(2015/02/16)

グローバルITにおけるベンダー、ユーザーの需給ギャップ その2勉強会終了後は、恒例の会費制ネットワーキングです。1000円会費で、ビールと乾き物、最後は車座になって懇談しました。

○日系グローバルユーザーのIT投資の方向性とベンダーの対応

一橋大学神岡先生をモデレータに、新日本有限監査法人シニアマネージャーの日向野さん、グローバルビジネス部会重点アジアグループ細谷主査(オージス総研)、鈴木委員(NECネクサソリューションズ)をパネリストに迎え、ユーザーのグローバルIT投資の動向とベンダー対応についてのパネル形式で発表頂き、さらに会場のグローバルビジネス部会メンバーの意見も発表され、活発な意見交換となりました。



​  1. ITDigital

(一橋大学神岡教授発表資料より転載)

 

  • ITDigitalテクノロジーが企業活動の隅々まで行き渡ろうとしている。
  • バックエンドのほうは、基幹系を中心に処理自動化、内部志向、管理コスト中心などの性格を有しており、これを従前のようにITと位置づけてみる。フロントエンドは、判断・意思決定、価値創造、ビジネス最適化、プロフィット中心、成長・差別化・競争力などの性格をもつ。これをDigitalと呼んでみる(図1)。日本企業はITは進めてきたが、Digitalのほうは不十分である。経営者がこれから求めるのは、競争力の源泉となるDigitalである。ITはコストセンターなので費用が少なければ少ないほどよい。こういう視点を持つことが重要。ベンダーもDigital化に貢献できるようにすべき。

 

  • グローバルIT投資のトレンドとしては、本社による海外拠点のガバナンス強化の方向にある。中小企業にはこの傾向に多少立ち後れが見られ、規模が下がるにつれ、ITガバナンスのギャップは大きくなる。
  • JoC向けITはもともと大きな市場ではなく、業務アプリ構築は採算性もうすい。ベンダーはJoC向けITに限定したビジネスから脱却すべきである。たとえば、海外ベンダーとのM&Aあるいは自社で版権を持つパッケージの海外展開という方向性もよいだろう。いままで国内主体でやってきたベンダーにとっては、海外ビジネスの拡大は大きなチャレンジであり、短期的に成果が出るものではないが、それでも敢えてそれを志向する背景には、長期的に見て国内のSI市場に成長性が期待できないこと、またユーザ企業のIT投資が海外向けに振り向けられていくトレンドがある。
  • JoCのトップは、製造部門あるいは営業部門出身の方が多く、ITには詳しくないケースが多い。一方本社の情報システム部門も海外のことには疎く、両社の関係は意外に疎遠となっている。ベンダーはベンダーで、顧客の(日本側の)情報システム部門とは連絡をとりあっているものの、ベンダーの海外現法とは疎遠だったりする。うまくコーディネートしていくことは、日本でのビジネスの支援業務ともなるので、JoCトップの相談にのっていくことは大切である。
  • 海外ではITエンジニアは、ユーザー企業の側に多く属しているが、日本では逆に7割がベンダーサイドに属している。ベンダーとしては、海外も含めた提案を行っていくことが顧客との関係を維持していく上で必要になってきていると考える。特に中小顧客については、よくサポートする必要がある。
  • 顧客の情報システム部門は、冒頭でいうITのことはよく理解しているが、Digitalのことにはあまり関与していない。情報システム部門とつきあっている我々ベンダーも同様の傾向にある。コスト削減ではなく、プロフィットを有むビジネスに関わる必要性を感じる。情報システム部門だけでなく、経営部門、営業部門、企画部門などの現場に近いところでのテクノロジーニーズにどう取り組むかが課題となる。

 

最後に、「ユーザー間のグローバル競争が激しいところでは、ITのコストをできるだけ減らしていく方向になるのは必然だ。コストのかかるITをできるだけ減らし、プロフィットを産むDigitalを増やす方向に行く。米企業では、売上げの10%がマーケティング投資に振り向けられている。その1/4は、マーケティング部門のDigital化投資である。これはコーポレートシステム予算に匹敵する規模の投資である。日本ではまだまだこの部分が弱い。」

「ベンダーも変わるべき時期に来ているのではないか。ユーザーは「本気」の丸投げを検討すべきであり、ベンダーはそれを受けられるだけの力をつけなくてはいけない。日本のITベンダーの海外展開にあたっては、日本のいいところを見抜き、ブランド化していくことが必要だ。10年前、日本のラーメンは海外では全く受け入れられていなかった。現在はシンガポールでもニューヨークでも行列ができる。微妙なチューニングか、成熟したサービスか、もっと別なものか、現地のニーズも見抜きその上でブランド化していくことが欠かせない。」という形でまとまりました。