新興市場(BOP)ビジネス・シンポジウム(その4)
-バングラデシュの社会情報基盤(SII)を参考として-
引き続き、有志の参加でワークショップを行いました-
(2014/03/20)
グループディスカッションの様子
まず、島田俊夫JISA副会長・市場創造チャレンジ委員長より、ガートナー調査の結果を紹介し、「2012年までは日本のCIOと世界のCIOの間で「重視するテクノロジー」についてかなり乖離があったが、2013年にはその差が縮まり、違いがなくなってきている。これからは、より日本の技術を世界に持ち出しやすくなる。日本発で世界の市場に向けて製品・サービス提供を目指すことにチャレンジしていきたい」と開会挨拶が行われました。
引き続き、本シンポジウム・ワークショップのために来日したJICAのITEEプロジェクト専門家庄子明大さんより、日本人の目から見たバングラデシュの状況について説明がありました。
「バングラデシュのICT産業は企業数1,000社、右肩上がりの成長を続けており、輸出額は1億ドルを超えた。新卒技術者の初任給は、月額2-4万円。バングラデシュへ進出した際のパートナーとなるのは、BracやグラミンなどのNGOが考えられる。社会課題の解決、開発課題の解決がビジネスチャンスになる。」との説明の後、JICAの実施しているBOPビジネス連携促進事業について、バングラデシュでの実績を中心に紹介が行われました。
「BOP層を顧客として見込まなければいけないのではなく、ビジネスモデルの中に組み込んでいればいい」「自社の強みをいかに開発課題の中で生かせるかが大事」とのコメントもありました。
続いて、具体的にどのようなBOP連携プロジェクトが考えられるか、東川さんのファシリテーションのもと、参加者の提案を募りました。次のような提案がありました。
・静脈認証による個人認証システムと携帯電話番号を組み合わせることによってカードレスのシステムを構築でき、ファイナンス、医療、保険などあらゆる分野に対応できる。
・ネットワークを利用して、リモートオフィス環境を構築することによって、事務所に通勤しなくても仕事ができれば、渋滞解消にもなる。
・渋滞は社会的問題である。タクシーのナビや渋滞ナビのようなものがあって、今どこにいて何時頃到着できるかがわかるだけでも役に立つ。
・渋滞による経済損失は大きい。物流を改善するようなシステムが必要ではないか。
・田舎へ行けば娯楽がない。日本の高度成長期に人々に活気を与えたものはテレビを通じてのエンターテイメントだったのではないか。田舎にはケーブルテレビを備えたコミュニティセンターが設置されており、これを軸として田舎の人々にエンターテイメントやITサービスを提供できるのではないか
・新興国においても女性の社会進出が増えているが、それに伴い女性が危険にさらされることも増えている。緊急通報によって女性を守るようなサービスがあればいいのではないか。
・国内で安否確認システムを提供している。子供が無事に学校に着いたか、学校を出たかを知らせるようなイメージだ。コストもあまりかからない。防災や安全情報などの点で役に立つのではないか。
ファシリテータ・東川さんの提案により、社会課題ごとに「個人認証」「防災・安全」「物流」「交通渋滞」「コミュニティ活性化」の5グループに分けてディスカッションをすることになり、参加者はそれぞれ関心のあるテーマ毎にグループを作り少人数でのディスカッションを行いました。グループ毎のディスカッションの様子を見ていた、庄子専門家とアシル先生からは、「いくつかを組み合わせることによって良いプロジェクトになる展望が持てそう」「現在行われているプロジェクトとの連携も考えられそう」との講評がありました。
参加者の活気溢れた議論により、オープンディスカッション、オープンイノベーションを体現した熱のあるワークショップとなりました。実際に会議室の気温も高くなり、シャツ1枚でも寒くない、そんなワークショップでした。
最後は、今後、さらに関心がある人に参加を頂き、プロジェクトが具体化できるかを詰めていくこととし、閉会となりました。ご協力頂いた関係各位、ありがとうございました。また本報告をご覧になって「自分のところにも連携できるソリューションがある」と思われた方、ぜひJISA事務局までご一報下さい。